映画評「パーソナル・ショッパー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2016年フランス=ドイツ=チェコ=ベルギー合作映画 監督オリヴィエ・アサイヤス
ネタバレあり

アクトレス~女たちの舞台~」(2014年)が大いに気に入った以外、オリヴィエ・アサイヤス監督は余りピンと来ない。前回観た「冬時間のパリ」(2018年)も面白く観られなかったが、それより一つ前の監督作品である本作は、それ以上にご挨拶に困る作品という感じ。

そもそもクリスティン・スチュワートのヒロインの仕事がよく解らない。終わってみれば彼女の仕事の内容が重要なのだから、これが終盤刑事の調査の段で初めてはっきりするのは主題の展開上どうかという疑問を呈さざるを得ない。

最後の方で明確になる有名人に変わって買い物をするパーソナル・ショッパーという仕事をするクリスティンは、3か月ほど前に双子の兄を心臓麻痺で失ったショックから立ち直れず、彼の妻もしくは恋人シグリッド・ブアジズと交流を保ちつつ、生前霊媒の力のあった兄との約束であるサインを待ち続けるうち、スマホに正体不明の発信者から奇妙なメッセージが入るようになり、霊かとも思われる相手と時間が許される時に対話を続けるうちに、雇用者であるスーパーモデルの死体を発見するに至る。
 ここで上で述べた刑事が出て来て彼女の仕事が詳細に解るわけだ。彼女は前後の謎めいた行動の説明がうまくできない為に重要参考人として渡航禁止となるが、結局はスーパーモデルの愛人でメンズ・ヴォーグ誌の記者ラース・アイディンガーが逮捕され、犯行を自白したことで自由の身になり、遂にパリを飛び出してオマーンの恋人の許へ向かう。

というお話で、途中スマホの相手(霊と思って間違いなさそう)の態度が悪党っぽくなったところで、少々オカルト・ホラーっぽくなるものの、オカルティックであるがホラーではない映画という当初の印象通り、やはり純文学であった。こうした思わせぶりは余り良いとは思わない。

舞台はパリでありながら、ヒロインはフランス人ではなく恐らくアメリカ人という設定であろう。英語以外は殆ど使わない。
 彼女は他人の走り使いのような仕事をしている。即ち文学的に言えばアイデンティティーを失っている状態で、それを霊との対話の末に取り戻していくという内容であろう。霊との対話というのは、恐らく相手が双子の兄であるから自身との対話と考えて良いわけで、相克の内容をサスペンス風に綴っていると僕は解釈する。
 しかし、持って回った思わせぶりな進行ぶりは、悪い意味で低回的に過ぎて面白味を欠く。最終的に何をやろうとしたかは大体掴めたと思うが、他人にはお勧め致しかねる。

神は不可知だが、霊はそうでもない(笑)というのがこの映画の結論のようだ。

この記事へのコメント