映画評「レ・ミゼラブル」(2019年)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年フランス映画 監督ラジ・リ
ネタバレあり

また「レ・ミゼラブル」の映画化かよ、と嘆いて観始めたら、同作の舞台の一つモンフェルメイユの現状を切り取った現代ドラマでありました。イスラム教徒の移民が多く集まる一種のスラム街である。

そこで横行する麻薬密売買を取り締まるのを第一の目的とする犯罪防止班(BAC)に新加入したステファン(ダミアン・ボナール)は、早速サーカスの連中が“市長”と呼ばれる統率役(スティーヴ・ティアンチュー)のグループに“子ライオンをここらの誰かに盗まれた”と文句を言って来て起きた諍いの現場に遭遇、隊長クリス(アレクシ・マナンティ)は彼らに探し出すことを約束して解散させる。
 SNSを探せば犯人に突き当たるだろうという読みは当たって、犯人に特定された問題児イッサ(イッサ・ペリカ)を捕縛しようとしたところ仲間の子供たちが逆襲してくる。これに怒ったもう一人のメンバーであるグワダ(ジブリル・ゾンガ)は勢い余ってイッサをゴム弾に発射してしまう。
 この様子を徒党に与しない少年バズ(アル=ハッサン・リ)がドローンで撮影していたのに気付いたチームは、イッサを助けるのも程々にバズを探すのに注力する。バズは別の顔役サラ(アルマミ・カミーテ)に助けを求める。
 チームの中で最も人権意識の高いステファンはサラに掛け合ってドローンのフラッシュメモリーをゲットして概ね穏便に収まったと思われる。が、イッサを筆頭にした子供たちは怒りを抑えられず、チームは勿論、他の連中たちにも歯向かっていく。他の二人と違い保身より子供の命や権利を大事にしようとしたステファンでも、爆竹の類を投げてこようとするイッサに向けてゴム弾の銃を向けざるを得ない。

この後どうなるか全く解らないところで映画は終了するが、 ユゴーの “世の中には悪い草も悪い人間もいない。 ただ育てるものが悪いだけ” という言葉と併せて本作の内容を考えると、外国人嫌いの一部保守が考えるような治安の悪化は、もっと移民の数が増えても日本では起こらないことを確信した。この映画が事実に即しているとしたら、かの地では、警察を含め、大人のレベルが低すぎる。生まれた時から暴力がはびこり過ぎている。これを見た子供が犯罪者かテロリストになるのは目に見えている。

僕の目には、現在の日本人はもっとマシのように見える。もし同じようになるとしたら、それは日本人が日本人が考えるほど優しくも賢くもない証左となる。何も教えないうちに移民たちは日本の習慣を守らないなどと言うのはデタラメも甚だしい。差別がなければ同じ民族が同じ地区に固まる必要はないが、現在の日本とは言え、差別はある。絶対人数の多いベトナム人の犯罪が少し目立つのは、法律を含めて日本側に問題があるから。あの参政党のメンバーがこうした意見を述べているのに驚いた。国家・民族を問わず一番犯罪率の高い20代独身男性が移民の人口構成において圧倒的に多いことを考えると移民の犯罪率は相対的に低いと、日本通のデーヴィッド・アトキンスンが述べ、それにも参政党議員は賛同していたと思う。アトキンスンは菅政権のブレーンでもあったからどちらかと言えば保守だ。

厳しい内容で、カメラワークに満足できないところがあるものの、他山の石として観るべきところが多い。

ゼノフォビアが日本の国会議員の間で増えて来た。移民排斥に向っている世界の動きに逆行しているのは、非正規移民をなるべく正規移民にしようとしているスペイン。実験と言っても良いのではないだろうか。アメリカと言うかトランプを怖がっていないのも良い。

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