映画評「ブラックドッグ」(2024年)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2024年中国映画 監督グアン・フー
ネタバレあり

純中国映画にしては、欧州との合作映画っぽい自由への希求が感じられる。国家に敢えて逆らいもしないが、良い顔をしようとする考えが微塵も感じられないところが良い。

今年になってサム・ペキンパーの「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」を再鑑賞したばかりだから分かったのだが、これはお話の結構として同作に相当インスパイアされた映画ではないか。恐らく誰も指摘しないと思われるものの、同作を意識した可能性がある。
 スティーヴ・マックィーンに相当する主人公エディ・ポンが過失致死のかどで服役していた刑務所から釈放されて10年ぶりに帰郷する。ゴビ砂漠の辺境である。
 開発の進展で飼い主のいなくなった犬が大量に野良犬化している為自治体は捕獲隊を作る。警官の知人に頼まれた彼は隊員となり、懸賞のかかった細身の黒犬を追いかける。殆ど口をきくことのない彼は優しいところがあり、噛みつかれた犬を捕獲すると色々と助け、犬との間に絶大なる信頼関係が生まれる。彼が死に追いこんだ青年の叔父や兄弟に追われるが、彼らも復讐の為に殺そうなどとは考えず、最後に彼に親切を施したりもする。
 動物園に住んでいる父親は弱って入院、長いこともなさそうである(恐らく映画の描かないところで死ぬ)。一時期姿を消した黒犬は事故に遭って重傷のところを発見されるが、牝犬との間に子供を設けて死ぬ。主人公はその子供をバッグに入れてバイクに乗ってまた旅に出る。

バイクで去るところが「ジュニア・ボナー」とそっくり。しかるに、僕が既にその前に、!と思ったのは、主人公と少し仲良くなるサーカスの美人トン・リーヤーが去っていくという扱いが、同作のバーバラ・リーと極めて似ていたからである。「ジュニア・ボナー」でも同居しない父親との関係が描かれていたこともあり、直接的に影響されたかどうかはともかく、脚本陣の誰か(恐らく主筆の監督自身)が鑑賞した時に頭に残っていた可能性を僕は考える。

新年が明け、人々が日食を見に砂漠の一地帯に集まる前後で動物が解放され、動物園にいたアムールトラまで町を堂々と闊歩するところがある。幻想か何か扱いがよく解らない(のは難点になりかねない)ものの、いずれにしても幻想的な美しい場面である。
 ゴビ砂漠が美しく捉えた画面が大いに魅力的である一方、横の構図をいかした感覚も良い。動物園内外で、主人公と父親の位置関係を強く意識した三つのショットのカット割りに感嘆した。こういう驚きは久しぶりだ。わが【一年遅れの映画賞】画面賞を獲る可能性高し。僕の個人賞を獲っても何の価値もありませんがね。

そうそう、ピンク・フロイドの「マザー」と「ヘイ・ユー」が突然使われたのも驚きで、これも★にプラスになった。特に「マザー」は音楽家出身という主人公が弾いたのかもしれないギター基調の演奏が本物と繋がっていき妙に感動した。「ヘイ・ユー」はエンディングに使われ、歌詞が内容に多少関係するようにも感じられて、素晴らしい。

大学時代に友人が僕がアルバム『ザ・ウォール』を買う前に「ヘイ・ユー」を絶賛していた。個人的には「マザー」も好きだ。「ブラック・ドッグ」と言えば、レッド・ツェッペリンの傑作。ツェッペリンは今週第7作「プレゼンス」を【オカピーの採点表】でアップします。どうぞよろしく。

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