映画評「童年往事/時の流れ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1985年日本映画 監督ホウ・シャオシェン
ネタバレあり

再鑑賞作品。

ホウ・シャオシェンの作品が正式に日本で劇場公開されたのは本作が最初ではなかったか。1947年に生まれた彼の少年時代(小学生~高校卒業くらいまで)を描く自伝的映画である。

1歳の時に本土広東省から台湾北部に逃れて来た彼(映画の中ではアハ)の一家は、しかし、父親(ティン・フォン)が肺病の為に南部へ移動する。これで馬鹿を見るのが北部の一流女子高に受かったのに、家で祖母(タン・ルーユン)、両親、弟4人の面倒を見なければならなくなる長女(恐らくシャオ・アイという女優)である。
 主人公アハは次男で、やはり病弱で兵役にも付けない反面学業優秀で師範学校に通う長男と違って頑丈に育ち、お山の大将気分が濃厚の少年である。
 祖母は既に恍惚の人であるが、故郷に対する思いはずっと持ち続ける。その思いは息子である父にもあり、帰郷を果たせないまま亡くなる。数年後咽頭癌を発症した母親(メイ・ファン)も亡くなり、姉が北部に嫁いだ後、残された兄弟たちが面倒を見る中祖母も死んでしまう。

作品のベースにあるのは親や祖母が抱き続ける故郷・本土への思いで、これを経糸であるとすれば、ややもすると非行に傾きがちなアハの青春模様が緯糸と言うべし。
 その模様は、例によってスケッチ的に捉えられ、これが大きな話の流れを作ることはない。タッチを観るべき映画である。

アハは暴れん坊だが、悪人からは程遠い。家の仕事はよくこなし、父親が亡くなっても母親が亡くなっても落涙する。大学に進学できなかった為、女子高生(シン・シューフェン)との恋も実らない。

感覚的にはかつての日本の家庭劇に通ずるところ多し。比較的想起しやすい小津安二郎を引用するなら、昨日の「生れてはみたけれど」的な陽に対して、こちらは「父ありき」のような陰気なムードの映画と言って良いと思う。他方、実はスピーディーな小津とは違ってかなりじっくり描き冗長にすぎると感じられる場面もある為、眠気のある時に観るのはまずいかもしれない。

高校生時代の主人公を演ずるのはユー・アンシュン。

テオ・アンゲロプロスが観られるなら大丈夫です。

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