映画評「オフィシャル・シークレット」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年イギリス=アメリカ=ハンガリー=ベルギー合作映画 監督ギャヴィン・フッド
ネタバレあり

政府当局の不都合な真実をここまで描ける英米映画にはいつも感心させられる。イラク戦争開始に関わる機密情報漏洩事件の顛末を描くもので、当時のブッシュ米国大統領もブレア英国首相も実際のアーカイヴ映像で出て来る。日本の劇映画では僕が生きている間に金輪際こんなモノホンの政治的実話ものが出て来ないだろう。かなり実話に接近しても実名を出さないから迫力が減じる。それでも作られれば良い方だ。

9・11の1年半近く後の2003年1月、イラクに戦争をしかけたい米国NSAが英国のGCHQ(政府通信本部)に驚くべきメールを送って来る。(戦争を合法化すべく)英国政府に国連加盟国の一部に工作を施せという内容で、それを読んだ平和主義者の職員キャサリン・ガン(キーラ・ナイトリー)は違法な戦争はまかりならぬと義憤に駆られ、運動家の女性に働きかけ、彼女の知り合いであるジャーナリストであるオブザーバー紙ブライト記者(マット・スミス)にリークさせる。
 本物であるという確信を持った同紙は発表に至る。米国側はこれは偽物であると反撃してくるが、その事実以上に、問題は、ヒロインが政府職員としての秘密保持条項を守らなかったという国内事情に収斂していく。

日本にも特定秘密保護法なる法律があって、この法律が施行される時にジャーナリストなどの萎縮が沙汰されたが、実際には自衛隊などの内部で問題になった例が幾つかある程度に推移している。僕も当初、知る権利絡みで問題がある法律だと思ったものの、よくよく考えてみたら、当局側は内部関係者を別にすると訴えないのではないかという考えが浮かび上がって来た。何故なら外部の者を訴えれば、警察・検察・裁判官に内容を開示しなければいけない可能性があるからで、隊員・職員等の義務違反で訴えるのが関の山だと思えて来たのである。それがこの映画の驚くべき幕切れを見るとよく分かる。

結局検察は訴え自体を取り下げる。恐らく政府が、裁判になると不都合な真実を開示しなければならず、被告を有罪にできないだけでなく、政府自体が痛手を受けるから取り下げを命じたのであろう。しかも、それは早々から分っていたが、職員に嫌がらせをするつもりですぐに告訴しなかったのだと公訴局長は元同僚の弁護士ベン(レイフ・ファインズ)に打ち明ける始末。ひどいですな。

冒頭に述べた通り、遠慮なく政府や当局の旧悪を暴く態度において英米に違いはないが、英国(主体の)映画は描写・表現が抑制的であり上品、しかもかちっと作っていて好感を覚えることが多い。本作もその例に洩れない。

今沙汰されているスパイ防止法は、庶民にとって特定秘密保護法と比較にならない危険性があるようだ。防止法に賛成の人も(知的レベルの低い人を別にして)こぞって、現状のレベルでは非常に危険で、この法律が存在していたら大川原化工機事件の冤罪被害者は一生刑務所暮らしになっただろう、と言っている。日本人に適用された場合、現状では、冤罪製造機となる法律ということですかな。

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