映画評「彩られし女性」

☆☆★(5点/10点満点中) 1934年アメリカ映画 監督リチャード・ボレスワフスキー ネタバレあり サマセット・モームをスター・システム時代のハリウッドはうまく映画化することができない。  尤も、それはモームに限らず、純文学は尽くメロドラマ化されてしまい、トルストイの「アンナ・カレーニナ」を Love という題名で映画化し…
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映画評「こんにちは、母さん」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・山田洋次 ネタバレあり 山田洋次91歳の第92作。まだまだ元気である。マノエル・ド・オリヴェイラ(104歳まで映画製作)、新藤兼人(99歳まで)など上には上がいるので、もう少し頑張って戴きたい。  劇作家永井愛が2001年に発表した戯曲が原作で、2007年にTVドラマ…
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映画評「アンダーカレント」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・今泉力哉 ネタバレあり 監督で映画を観る人にとって今や今泉力哉は最重要の監督の一人だ。大体においてはエリック・ロメールのような会話主体のコントであって、ドラマは枠に過ぎない感じが強いが、本作は豊田徹也のコミックという原作があるので、通常よりドラマ性が高い。 昔「時…
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映画評「聖バンサン」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1947年フランス映画 監督モーリス・クローシェ ネタバレあり フランス人でもクリスチャンでもない僕は全く知らなかったが、現在のNPOのような活動を17世紀に行ったカトリック教会の聖人であるヴァンサン・ド・ポールの伝記映画である。プライムビデオにて鑑賞。 17世紀初め、伯爵ゴンディの領地の…
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映画評「ヴィレッジ」(2023年)

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・藤井道人 ネタバレあり 20年程前に同名邦題のアメリカ映画があった。アメリカの村ものは迷い込んだ外部の人間が抜け出すのに悪戦苦闘するというホラー映画が多いが、日本製の本作は社会派に日本的な村もの要素を加えたような映画である。そう言えば、M・ナイト・シャマランの同名作も大枠…
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映画評「乙女の星」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1946年フランス映画 監督クロード・オータン=ララ ネタバレあり 1940年代は肖像画が重要な役目を果たす映画が多く作られたが、それ以上に作られた感さえあるのが幽霊映画である。「天国から来たチャンピオン」のオリジナル「幽霊紐育を歩く」(1941年)「幽霊と未亡人」(1947年)など傑作も多く、…
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映画評「ほかげ」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・塚本晋也 ネタバレあり 「野火」で戦地を取り上げた塚本晋也が今度は終戦直後の日本それも闇市に特化したところが注目される。あくが強いのでどちらかと言えば苦手の監督の部類だが、ある時期以降は初期に比べれば大分幅広い客層に受けそうな作り方・内容を示している。 居酒屋を経営…
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映画評「映画「窓ぎわのトットちゃん」」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・八鍬新之介 ネタバレあり 世界的ベストセラーとなった黒柳徹子の自伝エッセイ「窓ぎわのトットちゃん」は、40年ほど前姉が母親にプレゼントしたので、帰省中に読もうと思えば読めたわけだが、僕は手に取らなかった。  が、先日彼女が通ったトモエ學園を取り上げた「新プロジェクトX…
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映画評「キリエのうた」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・岩井俊二 ネタバレあり 岩井俊二は少女と言って良いくらいの若い女性を主人公にした作品が得意で、本作は、マイルドだった前回の「ラストレター」「チィファの手紙(「ラストレター」のオリジナル中国版)」とは違って、3・11を絡めて少々ハーシュな印象を伴うが、そのハーシュさの中に…
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映画評「お前の罪を自白しろ」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・水田伸生 ネタバレあり 真保裕一の同名ミステリー小説の映画化。久松真一の脚色を経て、水田伸生が映像に移した。 自民党ならぬ与党・日本新民党のベテラン議員宇田清治郎(堤真一)は、加計問題よろしく、荒川橋建設を巡って総理の友人に利益があったのではないかと野党の追及を受け…
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映画評「青春シンドローム」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 1994年フランス映画 監督セドリック・クラピッシュ ネタバレあり 松井大悟監督「くれなずめ」は本作にインスパイアされた可能性がある。セドリック・クラピッシュの長編第2作で、彼のお得意な青春群像劇である。 1980年代初めくらい、若者4人(ヴァンサン・エルバズ、ニコラス・コレツキー、ジュリ…
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映画評「ダンサー イン Paris」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2022年フランス=ベルギー=オランダ合作映画 監督セドリック・クラピッシュ ネタバレあり デジタル時代のフランソワ・トリュフォー(アントワーヌ・ドワネルものの若い時代のものを考えて)という綽名を付けたセドリック・クラピッシュの青春映画である。 パリ・オペラ座でエトワール(最高位)を目指す…
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映画評「ドミノ」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年アメリカ=イギリス=カナダ合作映画 監督ロバート・ロドリゲス 重要なネタバレあり。鑑賞予定のある方は採点だけどうぞ。 ロバート・ロドリゲスのSFスリラー。 数年前に眼前で娘を誘拐された刑事ベン・アフレックが、貸金庫の強盗を予告された銀行の周辺を警戒するうちに、見たことのある男ウィリ…
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映画評「美しき争ひ」

☆☆★(5点/10点満点中) 1938年フランス映画 監督レオニード・モギー ネタバレあり 日本でも大評判を呼んだ「格子なき牢獄」(1937年)のレオニード・モギー監督が、同作に主演したコリンヌ・リュシェールとアニー・デュコーを起用して作り上げたメロドラマ。 姉カトリーヌ(アニー)が、その夫の働く博物館に駆けつけた妹クレ…
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映画評「すべてうまくいきますように」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2021年フランス=ベルギー合作映画 監督フランソワ・オゾン ネタバレあり 先日の「私がやりました」でフランソワ・オゾンはサムライではないかと述べたが、明快なお話ながらも本作を観ると益々そう思えて来る。原作は、エマニュエル・ベルンヘイム(ベルネイム)という女性作家による自伝。 そのエマニュ…
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映画評「テノール! 人生はハーモニー」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2022年フランス映画 監督クロード・ジディ・ジュニオール ネタバレあり コメディーの監督として知られるクロード・ジディの息子の監督作品。 ライバル・グループとの争いの一環でラップ・バトルに奮闘しているアラブ系フリーターのアントワーヌ(モハメット・メルキル)が、スシを配達した音楽学校で生意気…
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映画評「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」

☆☆★(5点/10点満点中) 2022年フランス映画 監督アルノー・デプレシャン ネタバレあり アルノー・デプレシャン監督は相対的に苦手である。人間の面倒臭いところを描き、見ていてどうにもすっきりしないことが多い。 本作のお話の構図は単純。 女優として名を成した姉マリオン・コティヤールと、作家として成功した弟メルヴ…
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映画評「法廷遊戯」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・深川栄洋 ネタバレあり 偶然にもアングルの付けられた法廷ミステリーが続く。 五十嵐律人なる現役弁護士でもあるミステリー作家の同名小説を、原作ものを任されることの多い深川栄洋が映像に移した。 1年前に弁護士になったばかりの永瀬廉が、同じロースクールを卒業した杉咲…
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映画評「私がやりました」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2023年フランス映画 監督フランソワ・オゾン 重要なネタバレあり。鑑賞予定のある方はご注意あれ。 何を作るか予想が出来ないところのあったアラン・パーカーはサムライと思ったが、フランソワ・オゾンもサムライではなかろうか。ジョルジュ・ベルとルイ・ヴェルヌイユによる原作戯曲があるとは雖も、こういう洒…
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映画評「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2022年フランス映画 監督オリヴィエ・ダアン ネタバレあり 映画に関連づけて政治について色々と書くことがあるが、僕は本来ノン・ポリだから政治に疎く、フランスに最も愛された政治家シモーヌ・ヴェイユ(1927-2017)について全く存じ上げなかった。 1943年から45年まで彼女はホロコース…
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